東京21法律事務所所属

弁護士 広津 佳子  Lawyer Keiko Hirotsu Official Site

ブログ
2017/11/25
ファミリービジネス 講演会
  先日、縁があって、ファミリービジネスの世界では著名な書籍である、”Generation to Generation” (邦題:オーナー経営の存続と継承)の共著者であるIvan Lansberg氏とKelin E. Gersick氏、並びにファミリービジネスにおける女性の役割についての 研究において著名Gersick氏、並びにファミリービジネスにおける女性の役割についての 研究において著名な学者である、Connie Gersick氏 の話を聞く機会を得ました。

 200年以上の老舗企業が世界には8785社。そのうち日本には、3937社が存在すると言われていますが、これらの老舗企業の多くは、ファミリービジネスで、日本の経済を支えていると言っても過言ではありません。

 ファミリービジネスは、3つのサークルモデル(オーナーシップ、ファミリー、ビジネス)で考えると分かりやすく、ファミリービジネスの課題は、それぞれのサークル(2つ又は3つのサークルの重なり合い、若しくは全く重なっていないサークル)のマネージメントに関する課題でもあります。

 ファミリービジネスは、世界的に共通の課題に面しているようです。例をみないグローバル企業の台頭により、これまでファミリービジネスのインキュベーダー的役割を果たしていたニッチな市場には、今は、グローバル企業も参入し、ファミリービジネスには厳しいビジネス環境の変化の指摘がありました。

 そして、最近は、富を創造した世代の高齢化により、事業承継の必要性が高まっていることです。これは、日本も同じです。事業承継は、突然起きるものではなく、プロセスでなければなりませんが、事業承継計画を阻害する要因として、
①シニアが、ヒーローとしての使命を喪失や英雄としてのイメージの喪失を恐れ、退陣を拒んでいる、
②ジュニアの承継、準備が出来ていない、
③システム、環境、そしてファミリーが変化を恐れている、
等の指摘がなされていました。
講演会では、10カ国以上でビジネスを展開しているファミリービジネスで、事業規模も相応である企業の90歳の創業者は、65歳の息子後継者にビジネスの全てを任せようとせず、全ての会議及び主要なクライアントとの商談の出席を求め、65歳の息子後継者は、その時間の60%を90歳の創業者のコントロールのために時間を割かなければならないというお話もありました。

 会場には、3代目のファミリービジネスの後継者として中学生も出席されていました。また、大学生からも積極的な質問がなされ(オーナーシップは、単独承継か複数承継か)、日本におけるファミリービジネスの承継に関する関心の高さをうかがうことができました。

 もともと、オーナーシップの単独承継は、農業の単独承継に由来するそうです。まさに、田畑を子どもの数で分けると、孫やひ孫の時代になると、それぞれの田畑の面積が少なくなって収穫が減るから、家が没落するという「田分け」のことで、田畑を承継できなかった子が、弁護士その他の専門家になって活躍するようになったとのことでした。ただ、単独承継では限界もあり、多様性が必要(しかし、複数のオーナーシップでは、うまくマネジメントするためのスキルも必要)との指摘は、なるほどと思いました。

 そして、”良いアドバイザーの選び方”という会場からの質問に対しては、上記3名のスピーカーの回答は、
①まず、ファミリーの中に解があることを認識していること、アドバイザーは、多くの成功例と失敗例の指摘はできるが、ファミリービジネスの要は、ファミリーやビジネスの関係者との良好な関係性の構築にあることを理解しているアドバイザーであること、
②ファミリー全体に対する関心を持ち、本当のクライアントは、まだ生まれていない世代であることに理解していること、
③アドバイザーは、単にスキルを教えてお金をとる専門家ではだめである。アドバイザーの履歴書に、実績として自分の能力を超える慈善活動をしているか、より大きな大義の為に仕事をしているか、社会的関心を持っているかを見ること、
等でした。

 2017年11月18日の【カスタマー・ドリブン・マーケティングとAI】のブログでも書きましたが、私も、専門家としての知見や知識だけでなく、メンターとして、もっと広い視野でかつ深い分析と経験を積む必要性を感じておりましたので、スピーカーのお話には、共感するものがありました。
 
 ファミリービジネスを研究されているこの3名の方は、「大義の為に仕事をしていること」、「社会的関心を持っていること」とお話をすることからも分かるとおり、いずれも、お人柄の良さを感じさせる方ばかりで、得るものが多かった講演会でした。 
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