東京21法律事務所所属

弁護士 広津 佳子  Lawyer Keiko Hirotsu Official Site

ブログ
2017/7/15
働き方改革
 2017年3月28日に、政府から公表された、「働き方改革実行計画」には、労働時間の上限規制に関する具体的な方向性が関心を集めていることは、周知のとおりです。

 以前から、国会で審議されないまま放置され、2017年4月にも、高収入の専門職を労働時間規制の対象から外すという高度プロフェッショナル制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)の導入を柱とした労働基準法改正法案の成立が断念されましたが、2017年7月13日に、連合会長が安倍首相と会い、法案の修正を要望し、法案の成立の見込みが出てきたというニュースを拝見しました。 

 連合の要望する修正は、
①年間104日の休日確保、退勤から出社までに一定期間の休息をもうける勤務間インターバル制、2週間連続の休暇、臨時の健康診断などの複数の選択肢から、それぞれの企業の経営者と労働組合が合意したうえで「健康確保措置」を選ぶようにするというものです。
②また、労働基準法改正法案に盛り込まれている裁量労働制の対象拡大についても修正を申し入れ、実労働ではなく、「みなし労働時間」に基づいて賃金を支払う制度である裁量労働制を、従来の弁護士や公認会計士などの専門職や、研究職、クリエイティブ職だけでなく、法人向けのソリューション型営業と呼ばれる提案営業にまで適用拡大するという案のようです。

 民進党や共産党が「残業代ゼロ法案」「過労死を増やす」として強く反発していた「高度プロフェッショナル制度」を、連合が受け入れる方針に転換した背景の1つとして、働き方改革が企業の間に急速に広がり、必ずしも時間に縛られない働き方を求める人が増えているという事情が指摘されています。
 
 上記の政府がまとめた働き方改革実行計画には、残業時間の上限規制(原則月45時間、年間で360時間。最大で年間720時間、繁忙期には特例で月100時間まで容認)がありますが、連合の上記の高度プロフェッショナル制度の受け入れ方針への転換も後押しして、おそらく、残業時間の上限規制を盛り込んだ労働基準法の改正法案も成立するものと思います。

 業務の効率化により、時間外労働の減少や自宅勤務等の導入は、多様な人材の確保の上で好ましいと思いますが、心配なのは、上司が部下の仕事を引き受けているケースの場合には、上司の業務負担が重くなっていること、さらにフランスでは、労働時間の上限を週35時間に制限したために、かえって時間内に終わらない仕事を押しつけられて、精神的に追い詰められ、過労自殺が増えたという報告もあること、また、業務のクオリティーの低下や部下の経験不足等のおそれです。
 
 他方、人工知能(AI)が働く人の幸福感を向上させるアドバイスを送ることで、業績が上がるとの実験結果も発表され、働き方改革への貢献も期待されています。
 働き方改革とAIは、密接なものになりそうです。
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