東京21法律事務所所属

弁護士 広津 佳子  Lawyer Keiko Hirotsu Official Site

ブログ
2016/12/24
自動運転・AI技術と倫理
 最近の自動運転技術やAIに関する報道は、めまぐるしいものがあります。
 
 12月19日には、ダボス会議を主催する世界経済フォーラム(WEF)の呼び掛けで、トヨタや日産、VW、GM、SOMPOホールディングス、米リバティ・ミューチュアル・グループなど世界27社が参加する自動運転コンソーシアムが今月中に発足するという報道がなされました。このコンソーシアムにて、米国ボストンの道路で本格的な自動運転の実証実験がスタートされるそうです。参加企業の多いこのコンソーシアムが、自動運転に関する世界共通の制度の設立や標準化を主導する可能性があると見られていますが、このコンソーシアムには、米国の電気自動車メーカーのテスラ、さらにフォード、米グーグルなどの企業は参加しません。

 12月22日には、このコンソーシアムに参加しないホンダが、やはりコンソーシアムに参加しない、米グーグルを傘下に持つアルファベットの子会社として独立したばかりの自動運転部門ウェイモ(Weymo)と提携すると発表され、ウェイモの自動運転用センサーやソフトウェア、車載コンピューターなどをホンダ車両に搭載し、共同で実験を開始したそうです。ホンダも、技術の“心臓部”をグーグルに開示して、一気に完全自動運転を実現しようとしているのかもしれません。ホンダは、今年の7月、ソフトバンクグループが開発したAI技術「感情エンジン」を活用した共同研究を開始すると発表しています。この感情エンジンとは、各種センサ情報を集約し、擬似的な脳内分泌を定義し、AI自らの感情を擬似的に生成することができるのだそうです。技術的に自前主義を貫いてきたホンダは、一気にオープンイノベーションに舵を切った印象があります。

 そして、本日の日本経済新聞(東京)の1面トップは、デンソーがNECと連携し、自動運転などの実現に向け、人工知能(AI)を活用した車載製品を共同開発するなど包括的に連携するというニュースでした。通信機能が付いたコネクテッドカー(つながる車)が普及するとサイバー攻撃を受けるリスクが増しますので、セキュリティー対策に関してもNECが協力するものと思いますが、この新聞記事には、デンソーがあらゆるモノがネットにつながるIoTで全世界の工場をつなぐ取り組みを進めているとあり、そのスケールの大きさを改めて感じました。デンソーは、NECの他、東芝やソニーとも連携をし、日本勢で連合して、欧米に対抗するのだそうです。

 しかしながら、完全自動運転が実現化されれば、運転手という職業は不要になりますし、AIにより、ほとんどの知的労働者は不要となります。弁護士も例外ではありません。

 ものすごいスピードと競争で、自動運転技術やAI技術の開発が進んでいくのと同時に、我々が考えなければならないのは、倫理の問題だと思います。AIと人間が共存するにはどうしたらよいか、人間はいかに生きるべきか、AIが人を殺したら誰が責任を負うのか、AIの殺人の”予見可能性”の有無など、哲学や法学、心理学、社会学など、垣根を越えて多分野の専門家も一緒になって、議論をする必要があると思います。

 法律で全てを規制することはできませんので、倫理の問題は、結局、1人1人の意識の問題だと思います。私自身も、周囲の皆様のお話をうかがい、どういうつもりでやっているのか、日々、自分と対話をしながら、過ごしていきたいと思います。
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