東京21法律事務所所属

弁護士 広津 佳子  Lawyer Keiko Hirotsu Official Site

ブログ
2016/12/18
内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドラインのリリース
 最近のニュースは盛りだくさんで、このブログに何を書こうかと考えているうちに、12月も下旬になりました。

 まず、心を痛めるニュースとして、11月末には、私の母校である学芸大学附属高校のいじめ問題に関し、学芸大学が記者会見をしました。報道で伝えられるいじめの内容も看過できないもので、しかも、残念ながら、高校側にて真摯な取組はなされていなかった様子です。いじめ問題に気づく鋭敏さやトラブルに対応する方法が分からず、生徒を含めた内部からの自浄作用には期待ができなかったのでしょうか。

 また、DeNAの情報まとめサイトに不正があったという問題で記者会見も開かれています。DeNAの問題は、以前から内部にて問題点から指摘されていたようですが、外部から指摘をされないと動かない、自浄作用が働かなかったという点にあると指摘されています。

 今年2月には、日本取引所自主規制法人は、上場会社における不祥事対応のプリンシパルを発表し、調査体制の構築や第三者委員会、情報開示などのあるべき姿を示していますが、不祥事の時だけがんばるのではなく、日頃から、ステークホルダーである従業員、取引先、顧客などとの信頼関係を構築して、不適切な情報も入手して対応する体制、そして万一不祥事が起きても、当該企業の再発防止対策や改善措置を支援する体制を調えておくことが大事だと言われています。

 例えば、カネボウ化粧品で白斑症状を発症した被害者から全国で相次いで訴訟が提起されていますが、本年7月の日本経済新聞の報道によると、被害者数は1万9585人で、示談や裁判の和解を含めて和解合意したのは1万5880人だそうです。以外に、多くの人が早期に和解をしているというのが私の印象です。多くの被害者女性との間で早期に和解が成立している理由に関し、被害者女性は、カネボウ化粧品のファンで、これまでのカネボウ化粧品の販売員に対する思いなども背景にあること、そして、普段から、ステークホルダーである顧客とどういう付き合いをしているかが、不祥事発生後の対応に大きく影響するという説明を受けたことがあり、私はなるほどと思った次第です。

 ちょうど、平成28年12月9日に、消費者庁は、「公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン」を公表しています。

 消費者庁のリリースによると、主な改正点は、以下のとおりです。
①通報者の視点から、通報者の匿名性の確保、通報者に対する不利益な取扱いの禁止の徹底、自主的な通報者に対する懲戒処分等の減免措置(社内リニエンシー)を明記する
②経営者の視点から、役割や経営幹部からも独立性を有する通報ルートの整備、内部通報制度の継続的な評価や改善について明記する
③中小事業者の視点から、何社かが共同して法律事務所や民間の専門家等に通報窓口を委託するなど、規模や実情に応じた適切な取組を促進する
④国民・消費者の視点から、法令違反等に対する社内調査・是正措置の実効性の向上の明記する

 これまでの内部通報制度は、パワハラやセクハラの被害対応には貢献してきましたが、本当の不祥事については、通報されることが少ない、あるいは有効的に働いていない印象です。
企業の規模を問わず、ステークホルダーと企業理念を共有し、企業の持続的な成長のために、私も、皆様とともに、内部通報制度の整備・改善に努力していきたいと考えています。
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