東京21法律事務所所属

弁護士 広津 佳子  Lawyer Keiko Hirotsu Official Site

ブログ
2016/9/23
続 弁護士の格差
 昨日のブログにて、企業内弁護士の数の記述が漏れていたことに気づきましたので、内容を補充します。

 別冊宝島に掲載されていた統計は、2015年6月のものでしたので、日本組織内弁護士協会が調査をした2016年の数字を挙げておきます。2016年6月時点の企業内弁護士の数は1707人だそうで、2001年9月時点では合計で66人でしたから、この15年で25倍以上になったことになります。
日本組織内弁護士協会が企業内弁護士を多く抱える上位企業名も公表していますが、以前は外資系の証券会社(メルリンチ日本証券、ゴールドマン・サックス証券、日本アイビーエム、モルガン・スタンレー証券等)が多かったのですが、現在では、上位企業から三菱商事、ヤフー、野村証券、三井住友銀行等で、メーカーでも弁護士資格を有する者の採用が進んでいます。

 さらに、弁護士の期ごとの企業内弁護士の数を見ると、弁護士のキャリアが40年、50年以上の10期台、20期台はゼロ、30年以上30期台は16名、20年以上の40期台は68名ですが、50期台が367人、60期台が1247人と、50期台以降が、急激に増えています。私のように20年以上の弁護士になると、40代後半に入ってきますので、転職後の職位はマネージャーと思われ、ポストも少なく、また、家族もいて(いわゆる”嫁ブロック”でしょうか?)、在籍している事務所である程度安定していて、あえて転職しようと思う契機が少ない等の事情もあり、転職市場としては大きくないのかもしれません。

 地域で見ても、企業内弁護士の登録は、東京に集中しています。これは、弁護士の登録が東京の一極集中傾向にあることと関係があると思います。弁護士1人あたりの人口比で言うと、1位の秋田は1万3645人なのに対し、最下位の東京は793人です。
 
 別冊宝島によると、東京は企業法務を専門に扱う弁護士の数も多く、企業法務を専門に扱う弁護士は全体の2割弱に限られるそうですが、大手企業の案件は、5大法律事務所が8割以上を担当し、利益相反のおそれもあることから、各企業の法務部門の人材確保もすすみ、こまごました案件なら、弁護士事務所に依頼することなく、自社で完結させるようになっているとの指摘もありました。

 昨日のブログでお伝えしたとおり、特に、大手企業は、司法試験合格者や弁護士資格を持つ者を企業内弁護士や法務担当として正社員採用しているケースが増えています。

 もっとも、見方を変えると、毎年1000人以上の弁護士が誕生しているのに、企業内弁護士の総数が1700人程度ですから、弁護士の増員決定の際に見込んだ程度には、企業内弁護士の採用が進んでいないということもできます。

 あくまで私の感覚ですが、規模を問わず、企業の案件は、配慮するべき要素も多いため、トータルで物事を見ることができる力が必要で、事実認定の力を要求されること、かつ個別の議論も強い必要があること、また何よりコミュニケーション能力が求められることから、企業法務を専門に扱う弁護士が全体の2割弱という前述の指摘に見られるとおり、企業法務の適性を有し、企業内弁護士として採用され得る者も、現在の司法研修所卒業者の2割程度というのが実情なのかもしれません。

 私のような社外の弁護士が絶滅危惧種とならないよう、努力を続けます(笑)。
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