東京21法律事務所所属

弁護士 広津 佳子  Lawyer Keiko Hirotsu Official Site

ブログ
2020/8/10
「さぼる勇気」
 「さぼる勇気」とは、奇数月に発行される、有斐閣の書斎の窓2020年7月号の東京大学名誉教授の中山信弘先生のエッセイのタイトルです。
 このエッセイによると、中山先生は、中学生のときに急性腎炎を患い、35歳(昭和55年)の時に腎不全で尿毒症となって人工透析を開始され、以後、週3回の人工透析を受けられ、途中、合併症や癌などに罹患し、途中3回もご葬儀の写真を交換しながらも、現在の75歳になっても、お元気でおられるという、素晴らしい先生です。そして、入院して透析を開始して3か月経過し、大学の勤務に復帰された際に、東大の商法の竹内先生から、「さぼる勇気を持ちなさい」と言われたとのことでした。竹内先生も、結核病のため、肺を切除されておられ、当時は、「結核にあらずんば学者にあらず」と言われた時代であったそうです。中山先生は、竹内先生に言われるまでは、「盡人事而待天命」を座右の銘にして、がむしゃらにがんばってきたそうです。それ以後は、「さぼる勇気を持つ」を座右の銘に加えたものの、「さぼれ」と言われても、どこまでさぼってよいか分からず、中山先生は、「選択と集中」という意味ではないか、学問以外の仕事を断れという意味ではないかと考えたそうです。しかし、東大の先生方は、政府の審議会の委員など、学外のお仕事も多く、特に、中山先生のご専門の知的財産権法の分野は、当時は、学者が極端に少ない上、頻繁に法改正が行われ、「余人をもって替え難い」という官僚からの殺し文句もあり、「選択と集中」ができなかったと反省をされておられました。東大の星野先生も、入院中、中山先生のお見舞いに来てくださったが、枕元に積んであった法律の本を見つけて、星野先生から、「こんな本は、即刻家に戻しなさい」とお叱りを受けたとも書いてありました。

 自分が大学時代にご指導を受けた民法と商法のゼミの先生方を拝見していても思いましたが、体力面でハンディーがあっても、中山先生を始め、中山先生のエッセイに出てくる著名な諸先生方の真摯で謙虚なお人柄に、心を打たれました。自らの法律分野の研究を積み重ねることで、社会に貢献するという強い意思と高い倫理観をお持ちと思いました。

  私の場合、経年とコロナ禍の運動不足のため、腹囲の大幅増(+体重増)という先日の健康診断の結果に慌て、運動だけは「さぼってはいけない」と、選択と集中の重要性を痛感した次第です。
 皆様のご健康を祈念しております。
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