東京21法律事務所所属

弁護士 広津 佳子  Lawyer Keiko Hirotsu Official Site

ブログ
2018/6/18
所有者不明の土地対策
 6月1日のことですが、政府は、所有者が分からない土地の解消に向けた対策案をまとめていました。
 国土調査法を改正し、土地の所有者や面積などを記す地籍の整備を急ぎ、衛星写真や民間の測量結果も活用し、所有者の氏名や住所が正確に登記が為れていない土地については、登記官に所有者を特定する調査権限を与える方針とありました。登記と戸籍の情報を連携させて、所有者を調べるシステムを構築し、自治体が把握できる所有者の死亡情報と国が管理する登記情報を結び付け、誰が現在の所有者なのか迅速に調べられるようにするようです。マイナンバーの利用範囲が広がれば、可能なシステムだと思います。

 また、土地所有者の責任としても、現在は任意の相続登記の義務化を検討し、土地基本法を改正し、所有者の責務を明記する方向で議論を進めるそうです。具体的な責務の内容は、今後の審議会で検討するとのことです。
 そして、所有者が土地所有権を放棄する制度も検討するとのことですが、放棄された土地の管理は誰が行うのかは簡単なことではなく、税収入が減ることにもなり、導入は容易ではないようです。

 最近、東京23区は、滞納している固定資産税・都市計画税が少額でもあっても、全相続人が相続放棄をして、放置されている不動産に関し、東京家庭裁判所に予納金(原則100万円です)を払ってでも、相続財産管理人を申し立てて、所有者不明の土地(及び建物)を増やさない施策をとっていると聞きました。相続人不存在の不動産は、民法の規定により、相続財産法人が所有しています。相続財産管理人は、その相続財産法人の代表者です。数十万円の滞納税金を回収するために、100万円の予納金を払ってでも相続財産管理人選任の申立をするなど、これまででは、考えられない対応です。所有者不明の不動産を増やさないよう、予算と人員が確保できる東京23区だからこそ、可能な対応だそうです。

 私も相続財産管理人に選任されることがありますが、当該相続財産管理人に選任された被相続人のご両親の相続に関する相続登記がなされていない場合、5年以上も前に亡くなった被相続人については、住民票の除票も戸籍の附票も取得ができないため、登記簿に載っている住所には、現在、住民登録又は除票もないし、本籍地もないことを証する書類(不在住証明書及び不在籍証明書)が必要になる上、相続財産管理人が市区町村発行の印鑑証明書を添付して、被相続人の最後の住所を証する書類は用意できないが、×年に亡くなった被相続人と同一人物であることに相違ないので、相続登記を受理して欲しい旨をまとめた上申書を法務局に提出しなければなりません。

 また、相続登記をすぐにしない場合には、私も経験がありますが、二次相続、三次相続も発生し、相続人の数も数十名に膨らむこともありますので、手続がたいへんです。

 人が生活をされていない様子の建物を見るのは、心が痛みますし、治安にも影響を与えます。土地も、勝手に第三者が占有する可能性もあります。少なくとも、相続税の申告と同様、遺産分割が未了でも、遺産共有状態での相続登記を義務化し、遺産分割協議が成立したら改めて登記をすることを義務化するような施策は必要だと思います。
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