東京21法律事務所所属

弁護士 広津 佳子  Lawyer Keiko Hirotsu Official Site

ブログ
2018/4/13
経済産業省 国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会
 今年の1月から、経済産業省で、国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会が開催されています。
 この研究会の内容は、我々弁護士にも関心のあるところで、既に公表されている議事要旨や配布資料を拝見していても、興味深い議論がなされています。
 例えば、委員の中の意見として、以下のものがありました。
・法務部員は、社内のプロジェクトに協力したときに、そのプロジェクトの打ち上げがあっても呼ばれない。つまり、プロジェクトへの寄与が認められていない実 情。外部の弁護士はもっと呼ばれない。私自身は「打ち上げに呼ばれる弁護士になる」ことを目指している。日本企業の法務人材のイメージも、平たくいえば 「打ち上げに呼ばれる法務人材になろう」というものになるのではないのか。
・事業部門と法務部門の距離感について、規制が強い業界は比較的距離が近いよう に思うが、距離感が遠い業界についてはどういう工夫ができるのか、議論が必要。
・テクノロジーと Law は、社会的に途切れてしまっているのも課題。
 企業がチャレンジするに当たり、グレーなところを攻める必要が生じることがある。コンプライアンスの面で完全にクリーンでないとやるべきではないというの が原則ではあるが、現実には完全にクリーンになることの方が少ない。法務部門 としては、グレーではなく完全にホワイトなところでやれというのは楽だが、そ れだと現場はビジネスをしないか、勝手にやる。リスクを取れるようにするのが 法務部門の腕の見せ所であるが、ハイネマンも言うように、無理をしてはいけない。
・前向きの案件と後ろ向きの案件は分けて考えて、後ろ向きの案件はグローバルス タンダードで厳しいコンプライアンスをやる。そこには経営の裁量が働く余地はあまりない。一方、前向きなものは、考え得る法的リスクをすべて法務部で整理 した上で、現地の状況を踏まえながらいろいろな保険もかけ、最終的に取れるリスクということなら後は経営判断に委ねるということではないか。
・現時点の法令を前提にすると「できない」と判断した事案であっても、「5年先 を考えろ」と当時の上司に言われたことが記憶に残っている。法律家は、今の世の中でどうかと考えがちだが、将来、現状の価値観が正しいことになっているかを考えることも必要。
・ある経営者も同じ発想を持っており、進めるべきビジネスに合わない法律なのであれば、変えるべきといっていた。欧米の経営者も同じ発想を持っている。
・「サピエンス全史」という本の中で、法は空想や虚構であり、絶対的なものではないとある。ハイネマン氏も、「Is it right?(何が正しいか。)」と法の背後にある倫理やロジックを問うことが大切であり、今は合法であってもゴールマウスが動くかもしれないし、今は違法でもゴールマウスは動かせるかもしれないことを指摘していた。
・(合法ラインという)ゴールマウスを動かすロジックを持てる人がいい法務パー ソンなのではないかと思う。

 3月13日と3月29日にも研究会が開催されているはずですが、現在まで、議事録も配布資料も公表されておりません。そこで、先日、経済産業省政策局 競争環境整備室に電話で確認をしたところ、これから3月の研究会の議事要旨も公表するし、配布資料も公表するが、反響も大きいので、どの資料を公表するか慎重な検討をしているところだそうです。そして、個社によっても状況が違うものの、報告書の形で公表することを考えているとのことでした。

 私も、5年後の日本は、AIやIoTなどのテクノロジーにより、大きく変わっているであろうと考えています。ゴールマウスを動かそうとする方々の支援と、プロジェクトの打ち明けに呼ばれるような法務人材をめざしたいと思います(笑)。
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