東京21法律事務所所属

弁護士 広津 佳子  Lawyer Keiko Hirotsu Official Site

ブログ
2017/1/30
平成29年1月1日、改正雇用機会均等法・育児介護休業法の施行~マタハラ防止措置
 雇用機会均等法と育児介護休業法の改正法が平成29年1月1日に施行され、事業主は、マタハラ(妊娠のみならず、育児・介護も含みます)防止措置をとることが義務となりました。セクハラについては、平成17年4月1日施行の雇用機会均等法と労働基準法の改正により、防止措置は事業主の義務となっています。

 厚生労働省は、平成29年1月1日から、「事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成28年厚生労働省告示312号)」と、「子の養育又は家族介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」という2つの指針を適用するとしています。

 これらの指針は、マタハラ防止措置の具体的な内容として、骨子として、以下を講ずるべき事項として定めています。
①事業主の方針の明確化・周知の内容
 (例)パンフレットを作る、就業規則の懲戒事由にマタハラを挿入する。
②相談体制の整備
 マタハラ、セクハラ、パワハラ等のハラスメントの相談を一元的に受け付ける体制を整備することが望ましい。
③マタハラが判明した後の迅速かつ適切な対応
 (例)迅速かつ正確な事実確認、すみやかな被害者に対する配慮、行為者に対する措置(厳重注意や懲戒処分、上司の配置転換、役職の転換や勇退等)、再発防止措置
④業務体制の整備
 労働者も制度利用ができるという知識を持つこと、周囲との円滑なコミュニケーションを図ること、自
分の体調等に応じて適切に業務を遂行していくという意識をもつこと等
⑤相談者や行為者のプライバシー保護、相談したことや事実関係の確認に協力したこと等を理由とする不 利益取扱いの禁止とその周知、啓発


  上記④業務体制の整備に関し、指針は、「周囲と円滑なコミュニケーションを図りながら自身の体調等に応じて適切に業務を遂行していくという意識を持つこと等を、妊娠等した労働者に周知・啓発することが望ましいこと」、あるいは「周囲と円滑なコミュニケーションを図りながら自身の制度の利用状況等に応じて適切に業務を遂行していくという意識を持つこと等を、制度等の利用の対象となる労働者に周知・啓発することが望ましいこと(派遣労働者にあっては、派遣元事業主に限る。)」と言っていますが、この部分は、労働者に対し、自分の体調や状況に応じて無理をするなと言っているのか、それとも、モンスターと評価し得るような過度な権利主張はするなと言っているのか、解釈が難しいと言われています。

 ただし、事業主がよかれと思って配慮したことが、労働者にとってはマタハラと感じることがあるのは事実で、事業主と労働者間のコミュニケーションが大切であることは、言うまでもありません。


平成29年1月1日施行前に、私も、いくつかの顧問会社の就業規則や育児・介護休業規程を見直し、ハラスメントを含めた内部通報制度を整えましたが、最近、以前と比べ、労働者からの訴えや通報が増えた印象です。通報は、事業主と労働者間のコミュニケーションを図る機会にもなりますので、好ましい傾向だと思っています。

ところで、日弁連は、平成27年4月1日から、育児期間中の日弁連会費等について、弁護士である会員である限り、性別を問わず、子の育児をしていれば、申請により、子が2歳になる日の属する月までの間の任意の連続する6ヶ月以内の期間が免除となっています。日弁連の会費等は、月額1万6000円以上しますので、6ヶ月間の免除は、仕事と家庭の両立支援策として有効と思います。

 しかし、介護に伴う会費の一定期間の免除制度はないようです。介護休業が必要となる会員は、相応のキャリアと一定程度の収入を得ていて、直ちに会費を免除する必要性はないと思われているのかもしれませんが、育児期間はおおよそ目処がつくものの、介護は終わりが見えないことも多く、すみやかな対応が望まれると思います。
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