東京21法律事務所所属

弁護士 広津 佳子  Lawyer Keiko Hirotsu Official Site

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2016/9/24
女性活躍推進法
女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)の一般事業主に関する部分については、平成28年4月1日から施行されています。常時雇用する労働者の数が301人以上の事業主は、①自社の女性の活躍に関する状況把握、課題分析、②状況把握、課題分析を踏まえた行動計画の策定、社内周知、公表、③行動計画を策定した旨の都道府県労働局への届出、④女性の活躍に関する状況の情報の公表が義務付けられました。

 また、女性活躍推進法では、女性活躍に積極的に取り組んできた企業を認定する「えるぼし認定」制度を定めています。この「えるぼし」とは、様々な企業や社会の中で活躍し、星のように輝く女性へのエールと、そんな輝く女性が増えていくようにとの願いを込めて「えるぼし」と命名されたそうです。
 
 本年8月末までに、145社がえるぼし認定企業として認定され、認定企業には、公共調達にて加点評価がなされます。総合評価落札方式とプロポーザル方式などの企画競争方式(随意契約)による調達案件で、ワークライフバランスや働く女性支援などに積極的に取り組む企業について、加点評価するものです。

 このような公共調達における加点評価は、既に、次世代育成支援対策推進法に基づき、「くるみん認定・プラチナくるみん認定」企業においても採用されています。「くるみん」とは、赤ちゃんが大事に包まれる「おくるみ」と、「職場ぐるみ・会社ぐるみ」で子どもの育成に取り組もうという意味から、命名されたものです。
 
 この認定制度は、平成27年4月1日から始まっていますが、「くるみん認定・プラチナくるみん認定」を受けると、公共調達の加点評価のみならず、事業所内保育施設や授乳コーナーなど「次世代育成支援に資する一定の資産」について割増償却を行うことができる、税制優遇措置(くるみん税制)を受けることができます。

 その他、中小企業(常時雇用する労働者が300人以下の事業主)を対象に、若者雇用促進法に基づき、「ユースエール認定企業」の認定制度が、平成27年10月からスタートししており、ユースエール認定企業として認定をされると、日本政策金融公庫による低利融資や公共調達における加点評価も行われます。

女性活躍推進法が制定されたり、10年の時限立法である次世代育成支援対策推進法がさらに10年間の平成37年3月まで延長された背景には、少子高齢化が進み、労働人口が減少する中、女性の活躍推進が進んでいないためですが、日本企業では、特に女性役職者が増えていません。

 増えない女性の活躍の「壁」は、大きく以下の4つが指摘されています。
①女性を採用していない
 総合職採用の競争倍率は男性30倍に対し、女性は44倍。

②女性のことを育てていない
 将来的な育成に向けた教育訓練を受けている率は、25~44歳の全年齢層で男性よりも女性が低い、30代後半の場合、男性は28.8%、女性は15.3%。営業、生産部門は、約7割の企業が「男性9割以上の職場あり」と回答している状況。

③女性にとって続けたくない、続けられない
 約6割の女性が第1子出産を機に退職。妊娠・出産前後で退職した女性の約4分の1は、仕事と育児の両立の難しさで辞めた。両立が難しかった理由は、勤務時間が合わない、職場の両立を支援する雰囲気がない。

④女性にとって昇進したいと思えない
 課長以上の昇進希望を持つ女性は1割程度。昇進を望まない理由のトップは、仕事と家庭の両立が困難になること。

 日本企業の長時間労働(週50時間以上)の割合は、国際的に見て高くなっていますが、日本の女性労働者の長時間労働者の割合も他国の男性の水準と同程度で、女性労働者も長時間労働の実態があります。

NHKの朝の連ドラの「とと姉ちゃん」は、いよいよ最終週に入りますが、本日の放送分においても、子育て中の女性が早退により他の従業員にしわ寄せが行くことを懸念し、退職の意思表示をするなど、子育てをしながら、フルタイムで働く難しさを報じていました。
 
 性別、年齢、学歴、人種、価値観などの多様性を受け入れ、広く人材を活用するダイバーシティはトップダウンで行ったほうが進むと指摘されることが多く、日本企業のトップから、さらにダイバーシティを進めて欲しいと思います。
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