東京21法律事務所所属

弁護士 広津 佳子  Lawyer Keiko Hirotsu Official Site

ブログ
2016/7/24
最高裁判所判事岡部喜代子氏のインタビュー記事
 先日、女性の裁判官、検察官、弁護士、法学系の大学教授が会員である日本女性性法律家協会の会報を受け取り、さっそく拝読したところ、最高裁判所判事の岡部喜代子氏に対するインタビュー記事が掲載されていました。

 岡部判事は、最初は裁判官として任官され、退官後、弁護士、大学教授になり、その後最高裁判事になられましたが、岡部判事の記事で特に印象に残ったのは、①岡部判事が任官した頃は、法曹会でも、女性の活躍はまだごく少数であったこと、②最高裁判所で事件記録を見ていて感じる、弁護士の力量と弁護士の力量が事件に与える影響、③最高裁判事になっても、1つの事件で教科書5冊に必ず目を通すことの3点です。

 岡部判事は、①の女性がごく少数だったことについて、岡部判事が裁判官に任官した40年前頃は、裁判官も検察官も、女性の任官者は3名だったそうです。女性は結婚して家庭に入るものという認識が当時は一般的であったので、ご自分は変人であったとご指摘されているのが印象的でした。岡部判事の頃は、司法試験合格者が500人程度で、女性の合格者も5パーセント程度だったと思います(現在では、司法試験の合格者の25%ほどが女性となっているようです)。

 また、岡部判事は、②について、最高裁判所で記録を読んでいて新たに感じたのは、弁護士の力量が事件に与える影響が大きいという趣旨のご指摘でした。地方裁判所の裁判官として事件に関与していた頃は、弁護士の力量の差は勝敗にはあまり影響しないと思っていたそうですが、最高裁判所判事として事件記録を見ていると、弁護士の力量の差や事件に与える影響が大きいということが分かったとのことでした。勝つべきなのに勝っていないということがある、なぜか考えると、弁護士は、自分が見立てた事件のとおりに進めていて、別のところに本質があることに気づいていない、事案にあった主張を、分かる度に合わせて主張や立証をしなければなけないのに、最初にこうだと思うとそのまま進めてしまうからだとのご指摘がありました。具体的なエピソードが記事には掲載されていないので、抽象的な理解にとどまってしまいますが、私は、この記事を拝見し、弁護士は、訴訟進行に伴い、いろんな主張や証拠が提出されるので、その内容を見て、柔軟に主張や立証に工夫をこらすべきであるのに、最初の固定的な見方にとどまっている弁護士が多いという意味に理解をしました。
 
 そして、岡部判事は、③の文献調査の重要性について、現在でも、事件記録を読む際には、必ず、争点として気になる部分やその前後、当該法律がどういう利益とどういう利益を調整しようとしているのかという総論部分を中心に読むようにしているとのことです。知識として入っていると思うことでも、もう1回読んでみると足りないところや、こういう方向があるんだということに気づくことがあるそうです。

 今は、あらゆる分野で“ダイバーシティー”が声高に唱えられ、岡部判事が任官した頃とは全く違い、女性の活躍は目覚ましいと思います。その中でも、常に1事件あたり教科書5冊を読むというご努力を続けておられる岡部判事の記事に触れ、私も、常に基本を忘れずに努力を続けていきたいと思います。
RSSアイコンRSSフィードを購読