東京21法律事務所所属

弁護士 広津 佳子  Lawyer Keiko Hirotsu Official Site

ブログ
2016/7/9
今年の6月総会
 ブログの更新が遅れて、失礼をいたしました。まずは、昨年の2015年6月27日のブログと同様に、今年も、6月総会の感想を述べたいと思います。
 
 今年は、昨年以上に、さらに対話型総会が深化した印象を持ちました。その1つは、招集通知の工夫です。

 まず、大きな変更として、社内取締役・監査役についても、個別の選任理由を記載する会社が増えました。これは、会社法施行規則が選任の理由の記載を求めている社外取締役・社外監査役だけではなく、コーポレートガバナンス・コード原則3-1が、主体的な情報発信を行うべき情報開示の充実を求める項目として、取締役会が経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針と手続き、さらに個々の選任・指名についての説明を求めていることから、任意に株主総会参考記録に記載しているものです。

 また、招集通知の工夫のもう一つとして、招集通知に当該会社の経営理念を大きく記載する会社もありました。議長も、会社の企業理念や経営理念から、現在進行中のプロジェクトや企業戦略をご自分の言葉で真摯に説明をされていました。時折、株主から「株価が安い」や「配当が少ない」とのご批判も受けていましたが、さらなる株主との対話を進めて投資家への理解を得る努力を続けること、また研究開発のための内部留保の必要性等も丁寧に説明されておられました。 
株主総会は、株主を初めとするステークホルダーとの間で会社の企業理念、経営理念を共有するよい機会だと思われ、招集通知の目立つ箇所に、企業理念や経営理念を記載することは、よい試みだと思います。

 さらに、対話型総会の深化という意味で今年の株主総会で印象的だったのは、社外取締役の発言の機会が増えたことです。私が出席した株主総会における株主からの質問として、①社外取締役として、この1年何をやってきたのか、これから何をしようと思うのか(再任予定の社外取締役を対象とする質問)、②複数の社外取締役を兼職しているが、社外取締役として職務執行ができているのか、③当該会社のことを把握するのにどのような努力をしているのか、④当該会社の女性の登用について、女性の社外取締役はどのように考えているか等がなされていました。
どういう専門知識や知見を持っているのか、これまで、取締役会にてそれらの専門知識や知見を生かしてどういう発言をしてきたのか、今後も取締役の業務執行に対し、どういうアドバイスや監督をしていきたいのかについて、社外取締役はご自分の言葉で説明をなさっておられ、聴いていた株主も納得されていた様子です。

 そして、お土産を廃止する企業が増えてきた印象があります。お土産を廃止すると出席株主は少なくなりますが、それでも出席される株主は、お土産がなくても経営陣と対話をしたいという方ばかりとなりますので、対話を重ねる中身の濃い総会になる印象があり、今後も、益々対話型総会は深化していくと思われます。来年以降の株主総会も、楽しみです! 

 なお、トピックと言うほどではないかもしれませんが、ある特殊株主が6月に逮捕され、私は、その方の「議長!不信任動議!」というお言葉を聞くことが無かったです。それもあって、株主と経営陣が真摯に対話に対話を重ねることが印象的だったのかもしれません(笑)。
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