東京21法律事務所所属

弁護士 広津 佳子  Lawyer Keiko Hirotsu Official Site

ブログ
2015/8/12
会計監査の限界
 企業の粉飾決算等の不正のニュースが報道されると、必ず、監査法人は不正になぜ気づかなかったのかという指摘がなされます。
 監査法人(会計監査人)は、一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して、財務諸表に重要な虚偽表示がないかどうかについて合理的な保証を得るために監査を実施することになっており、”一般に公正妥当と認められる監査の基準”は、企業会計審議会により定められた「監査基準」、「品質管理基準」及び公認会計士協会の「監査実務指針」であると言われています。

 先日、会計監査の限界等を論じた弁護士の先生の論文を拝読しました。社外一般の財務諸表の利用者が期待する会計監査の意義と、実際に行われている会計監査との間に存在する乖離(期待ギャップ)を解消する取り組みの1つとして、2013年3月に企業会計審議会が設定した「監査における不正リスク対応基準」が挙げられ、2014年3月期決算に係る財務諸表から、金融商品取引法に基づく監査として、この不正リスク対応基準が一般に公正妥当と認められる監査の基準に含まれることとなったようです。
 しかし、会計監査の目的は、あくまで財務諸表に重要な虚偽記載がないことについて合理的な保証を得ることにあり、不正を発見することは会計監査の直接の目的とはされていないこと、しかも経営者の見積り・判断の誤りの可能性があること、監査証拠の入手の限界があることから、会計監査には一定の限界があることを認識することが重要であるという趣旨の論文でした。

 監査人には不正を発見する義務があるわけではないというご指摘はそのとおりと思いますが、不適切会計のケースは、形式的な帳票類は調っているのが通常ですから、形式的な点の監査のみに終わっているとすれば、”期待ギャップ”は大きいままであろうと思います。専門的知見を駆使し、サンプリング調査の中で、帳票に顕れた背後の事情を読み取ることが必要で、我々弁護士の領域で言えば、”証拠から事実を読み取る力(事実認定力)”が、益々重要ではないかという印象を持ちました。
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