東京21法律事務所所属

弁護士 広津 佳子  Lawyer Keiko Hirotsu Official Site

ブログ
2015/7/11
CGコードによる持続的成長の実現
 過日、富士写真フイルム(現在、富士フイルムホールディングス)の代表取締役副社長であった今井祐氏のセミナー「CGコードは真に『持続的成長と中長期の企業価値向上』に資するのか」を聴講する機会がありました。

 このセミナーの中で、特に印象に残ったのは、コーポレートガバナンスコードは「持続的成長」をうたっていること、持続的成長のためにはコンプライアンスの視点は不可欠で、ミッション・ビジョンのタテ展開が必要であることという点です。ミッション・ビジョンのタテ展開として、①経営理念と一体化された倫理規範・行動準則(ミッション)の策定と取締役会における決定と共有、②担当役員及び責任者(コードリーダー)の任命、③企業理念・コンプライアンス委員会を設置し、全社末端までのミッション・ビジョンの共有化、定着を図ることが指摘され、ミッション・ビジョンのタテ展開のよい例として、稲盛和夫氏によるJALの再建、フィロソフィーの策定、缶ビール片手の車座コンパによる自己反省会等の指摘がありました。
 
 また、中長期の企業価値向上のためには、ミッション・ビジョンのヨコ展開が必要で、コーポレートガバナンスコードの以下の4つの原則と、取締役会における独立社外取締役の構成を指摘されておられました。
①原則2-1
 上場会社は、自らが担う社会的責任についての考え方を踏まえ、様々なステークホルダーへの価値創造に配慮した経営を行いつつ中長期的な企業価値向上を図るべきであり、こうした活動の基礎となる経営理念を策定するべきである。
②原則2-2 
 上場会社は、ステークホルダーとの適切な協働やその利益の尊重、健全な事業活動倫理などについて、会社としての価値観を示しその構成員が従うべき行動準則を定め、実践すべきである。取締役会は、行動準則の策定・改訂の責務を担い、これが国内外の事業活動の第一線にまで広く浸透し、遵守されるようにするべきである。
③原則3-1 情報開示の充実
④原則5-2 経営戦略や経営計画の策定・公表

 会社は誰のものか、株主のものか、従業員のものか、経営者のものか、それとも会社は公器かという議論は以前からありますが、今井氏は、前述のコーポレートガバナンスコードの原則に「持続的成長」や「様々なステークホルダーへの配慮や適切な協働」等を入れたことから、金融庁は公器論をとったと言わざるを得ないと述べておられました。
そして、企業理念がある企業は、ない企業に比べて利益率(特にROA)が有意に高いこと、創業から100年以上、200年以上持続している老舗企業は、しっかりとした企業理念があるという指摘もありました。

今井氏のお話は、盛りだくさんで、さらに勉強してもう一度うかがいたいと思う内容でした。聴講された質問者の多くが、「腹に落ちた」との印象を述べておられました。

 ミッション・ビジョンのタテ展開やヨコ展開に資するよう、私は、コンプライアンスの観点からの指摘、リスクの低減や回避の努力を続け、さらに、自分自身においても、しっかりとした理念の下に、今後も良質なリーガルサービスの提供に努めて参りたいと痛感した次第です。
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