東京21法律事務所所属

弁護士 広津 佳子  Lawyer Keiko Hirotsu Official Site

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2015/6/7
マイナンバー制
 最近、マイナンバー制について質問されることが多くあります。平成27年10月からマイナンバーの通知が始まり、平成28年1月から利用が開始されることになっていますが、国の各機関の情報連携は平成29年1月から、地方公共団体との情報連携は平成29年7月から順次始まる予定です。そのため、利用開始当初は、国税に関する支払調書や地方税に関する支払報告書、社会保険、年金などに限られるのであろうと理解していますが、内閣官房が設置しているマイナンバーに関するホームページを見ると、日々、扱いが変わっているようで、私もよく、内閣官房と国税庁のホームページは見ています。

 内閣官房が設置しているHPにUPされている「マイナンバー 社会保障・税番号制度 民間事業者の対応」平成27年5月版を見ると、国民年金の第3号被保険者の届出については、事業者への提出義務は扶養親族であるから、扶養親族のマイナンバーの本人確認が必要であるとの指摘があります。そして、その際の本人確認の方法としては、従業員が扶養親族の代理人になるパターンと、従業員が会社の代理人になるパターンの記載があり、前者のパターンの場合には、会社が扶養親族の代理人である従業員について本人確認(代理権確認+代理人身元確認+本人番号確認)を行い、後者のパターンの場合には、会社の代理人である従業員が扶養親族について本人確認(本人番号確認+本人身元確認)を行うとなっていました。

他方、扶養控除等の申告書の提出の場合には、事業者への提出義務は従業員にあることから、扶養親族のマイナンバーの本人確認も従業員が行うので、会社が扶養親族の本人確認を行う必要はないとのことでした。しかし、従業員が従業員本人であることの確認(つまり、従業員からその都度、免許証等の提示をしてもらう)を会社が行う必要性はあると読み取れる表示でした。

 このような記述を見ると、形式的で、場合分けが多く、かえって処理が複雑になりそうな印象があります。官僚的な発想なのでしょうか。

その一方で、国税庁の特設サイトにある、国税分野におけるFAQを見ると、扶養控除等の申告書の提出に関し、扶養親族が扶養親族本人であることの確認や従業員が従業員本人であることの確認は不要であるという趣旨の記述がありました。即ち、自分の配偶者や子等の扶養親族である事実は、婚姻届や出生届で明らかですから、扶養親族本人であることの確認を従業員が行う必要はなく、従業員が扶養親族の通知カードで個人マイナンバーを確認するだけで足ります。そして、会社は、従業員の扶養親族の個人マイナンバーを通知カードで直接確認する必要もなく、扶養親族が扶養親族本人であることの身元確認書類を確認する必要もなく、当該従業員から報告を受ければ足りるとしています。会社は、一度、従業員から従業員の個人マイナンバーの提示を受けていますので、扶養親族の個人マイナンバーの提示の際に、あらためて従業員の個人マイナンバーの提示は不要です。また、従業員が従業員本人であるという意味の本人確認は、入社時に行っていれば、扶養親族の個人マイナンバー提示時に改めて従業員の免許証などの身元確認書類の提示を受ける必要はありません。
 国税庁の上記の記述は、より多くの税金を徴収するために、何度も現場に足を運び現場を知っている国税庁らしいもので、実務的で合理的だと思います。

 また、社会保険と税金で、扶養親族、特に第3号被保険者の取扱いが異なるのは、究極的には法律の仕組みが違うこと(第3号被保険者(妻)については、法律の建前上、当該第3号被保険者(妻)に届出義務があるのに対し、所得税の配偶者控除や扶養親族控除の申告義務は従業員(夫)が負うという、誰を届出又は申告の義務者とするかという差異)によりますが、これも形式的な印象があります。扶養控除等の申告であろうが、国民年金の第3号被保険者の届出であろうが、従業員や扶養親族からすれば、従業員が扶養親族の個人マイナンバーを会社に伝えるという場面は同じなのですから、扶養親族が従業員に代理権確認のための委任状を作成するなどという面倒なことも不要にして、取扱いを区々にせずに、国税の取扱いに統一するという公式見解の発表が望まれます。

 もっとも、会社や雇用主は、代理権の確認や本人確認をしたという証拠を残しておかないと、後日、問題になり得ますので、公式見解が出されない場合には、上記の社会保険の取扱いによるほかないと思われます。その場合、会社への提示(報告)前に配偶者の個人マイナンバーを紛失等した場合の責任をだれが負うかという点を考えると、委任状を作成してもらう手間はありますが、従業員が配偶者の代理人として処理をしたほうが無難と思われます。

 平成27年5月29日には、産業競争会議で、厚生労働省はカルテやレセプトを管理するための医療番号を新たに作り、医療番号とカルテを紐付けたり、戸籍や旅券、自動車登録で番号が活用できる方針を打ち出しています。IT利活用促進に向けた新たな法制度を整えられ、今後、民民の取引にも拡大する方針です。
 
 サイバー攻撃による年金機構からの情報の流出が確認され、マイナンバーと年金基礎番号との連携の時期は遅れるようですが、マイナンバー制の開始により、情報管理の仕方だけでなく、ビジネスモデルの変更を検討する契機になるように思います。例えば、強制加入の自賠責保険の登録には、おそらく、マイナンバーが利用されるようになるでしょう。厳格な情報管理システムの構築は必要としても、チャンスの到来かもしれません!
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