東京21法律事務所所属

弁護士 広津 佳子  Lawyer Keiko Hirotsu Official Site

ブログ
2015/4/26
各国の特許侵害訴訟
 2015年4月20日に、知的財産高等裁判所創設10周年記念として、日本弁護士連合会、特許庁、弁護士知財ネット主催で国際シンポジウムが開かれ、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、日本の5カ国の知財の裁判官及び弁護士参加による模擬裁判、パネルディスカッションが行われました。模擬裁判のテーマは、アップルとサムソン間のFRANDを巡る事例でした。

 2011年10月26日、27日の2日間にわたり、東京 (会場:ホテルオークラ東京)において開催された「日米知財裁判カンファレンス」の時は、日本とアメリカの裁判制度が異なるためか、日本とアメリカの裁判官の間のディスカッションがかみ合っていない印象で、私には理解ができませんでしたが、今回は、世界的な訴訟を題材にしたためか、各国の裁判官がどのように考えて結論を出すのか、理解することができました。

 このシンポジウム開催にあたっての弁護士知財ネットの勉強会に参加した際にうかがったのですが、私にとって興味深かったのは、国によって原告(訴訟提起者)の勝訴率が随分違うという点でした。日本は、特許権者勝訴率は20%程度とされ(但し、知財高裁所長の説明によれば、勝訴的和解をカウントすれば42~47%とのこと)、イギリスと同水準のようですが、ドイツの特許権者の勝訴率は69%、フランスは39%、オランダは41%だそうです(但し、ドイツの法律事務所のHP上の情報も含まれ、真偽は分かりません)。
 しかも、フランスには極めて強力な証拠保全手続きあります(saisie-contrefaçon)。帳簿等も差し押さえることができるそうです。
 グローバル企業の場合、これならフランスで証拠を保全し、その保全した証拠を使ってドイツで訴えたらよいのではと思ってしまいました(実際、そのように出来るかどうかは分かりません)。
 上記の国際シンポジウムの知財高裁所長のあいさつ文書にも勝訴率の記載があるくらいですから、各国の弁護士事務所が、自国の裁判所について、”うまい、早い、勝ちやすい(+安い)”などと宣伝をして、利用者がどの国の裁判所で提訴するのか、選ぶことができる時代がくるのでしょうか(笑)。
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