東京21法律事務所所属

弁護士 広津 佳子  Lawyer Keiko Hirotsu Official Site

ブログ
2015/3/9
国際課税ルールと海外子会社管理の重要性
2015年3月9日の日本経済新聞に、OECDが策定を進めていた国際課税の新ルールが2月に最終決着し、グローバル企業は2017年末にも世界の拠点の税務関連情報を日本を含む当局に提出する義務を負うことになり、3つの文書の提出先も確定したとの記事が掲載されていました。最初の提出期限は、3月決算企業は、2018年3月の見通しだそうです。
 そして、3つの文書の1つである国別レポートは、前事業年度の連結売上高が約1000億円以上の企業に限られるが、マスターファイル(グループ全体の構造・戦略に関する情報)やローカルファイル(海外子会社の経営・取引に関する情報)は売上高による提出免除規定が見当たらないとのことでした。

 この日本経済新聞の記事には、国際税務に対応できる事務経験を有する税理士が税務部門の3分の1を占める会社のコメントが掲載されていましたが、連結売上高1000億円以上の上場会社は結構あるところ、税理士が税務部門の3分の1も在籍している会社は、多くはないのではないでしょうか。

 最近、非公開会社においても、移転価格税制についてのご相談を受けることがあります。平成22年度税制改正で、移転価格文書化の規定が明確化されています。調査時に財務省令で定めた書類の提出がない場合には、推定課税等の不利益もあり得るところで(現に、課税当局に推定課税をされたケースがあったとの報告あり)、文書の管理・保存は社内で整備の必要があります。
 また、上記の日の日本経済新聞には、海外子会社の発信した迷惑ファックスで集団訴訟を提起され、10億円強の和解金を支払った日本の企業の事例も紹介されていました。

今後、益々、海外子会社を含めたリスクマネジメントが重要になってくるのは間違いないところで、海外子会社や海外の事業拠点にも、意識を浸透させる努力が必要です。
もっとも、対応できる人財も限られているというのが実情ではないかと思われ、長期的視点に立った人財育成も必要と思います。
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