東京21法律事務所所属

弁護士 広津 佳子  Lawyer Keiko Hirotsu Official Site

ブログ
2014/12/27
反対尋問は難しい その1
 弁護士をしていると、尋問することはよくありますが、尋問、特に反対尋問はやるたびに難しいと実感します。
 尋問は、主尋問(証人請求側が行う、要は味方から味方証人への尋問)、反対尋問(反対当事者、要は敵対立場から行う尋問)、再主尋問(反対尋問で崩れたところを修復するための味方からの尋問)の流れで行います。裁判官も補充で尋問をします。

 テレビドラマだと、証人が積極的に不利なことを証言したり、泣いて謝ったりするなど劇的な場面がありますが、実際の裁判での反対尋問では、そんなことは全然なく、矛盾しそうな、不自然不合理な証言の引き出しに徹することを心がけます。

 しかし、敵側の証人への反対尋問ですので、実際には、矛盾する事実を引出すことは非常に難しいと言わざるを得ません。反対尋問に関するアンケートでは、裁判官に対するアンケートでは裁判官生活で反対尋問がうまくいったのを見たことは1件ないしは数件というもので、反対尋問がうまくいく(反対尋問で敗訴しそうなところを勝訴したなど)のは数百件に1件なのかもしれません。やはり、反対尋問は難しい。

なお、弁護士に対するアンケートでは、3件に1件はうまくできるという回答が多く、裁判官に対するアンケート結果との差が生まれたのは、「人は現実のすべてが見えるわけではなく、多くの人は見たいと思う現実しか見ない。」、「人は、ほとんどいつも、望んでいることを信じようとする。」というカエサルの言葉の故かもしれません。つまり、身びいき故、あるいは勝敗はともかく矛盾しそうな事実を引き出すことができたという反対尋問の成功のハードルを現実的なものに設定したことによる差異なのかもしれません。

 結果はともかく、反対尋問終了後は、アドレナリンが出ていた影響なのか、いささか興奮状態が続くことが多いです。スポーツ後の疲労感を覚えると話す弁護士もいました。

 フランシス L.ウェルマン「反対尋問の技術 上下」は、私の司法修習生時代に、バイブルのように言われていました。事務所にありますが、今日では、貴重な書籍だと思います。このL.ウェルマン「反対尋問の技術 上下」には、反対尋問がうまくいった事例として、アメリカの大統領であったリンカーンが弁護士時代に行った反対尋問が掲載されています。

続きは、年始に。本年はお世話になり、ありがとうございました。
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