東京21法律事務所所属

弁護士 広津 佳子  Lawyer Keiko Hirotsu Official Site

ブログ
2014/11/15
弁護士が社外役員として機能するための能力 
先日、ブログ「ビジネス法務の部屋」で著名な山口利昭弁護士(大阪弁護士会)のセミナー、「社外役員経験者に聞く、社外役員に必要な実務のノウハウ」を受講しました。
 政府主導の下、男女共同参画推進の一貫として、民間企業における女性社外役員の登用促進を目的とし、企業が求める専門的知見を有する人材情報の提供を行う「はばたく女性人材バンク(仮称)」事業が平成26年度事業として予定されています。この事業への協力として、日弁連では各弁護士会に対し、年内を目処に女性社外役員候補者名簿の作成及び候補者照会窓口を設置することとし、現在、日弁連、東京、大阪の弁護士会にて、社外役員に就任する上で必要な知識等に関するセミナーを開催しています。上記のセミナーは、その指定研修の1つでした。
 
 山口弁護士のお話は興味深いものばかりでしたが、特に印象に残ったのは、弁護士が社外役員(特に社外取締役)として機能するための留意点として指摘されていた事項でした。その中でも、①株主との対話、②情報を確保できる体制の重要性(あえて社外取締役として、社長に異議を唱えると、それ以後は、重要案件に関するリスク情報が届かなくなる可能性があるため、就任前に社内の情報を共有できる体制を確保するための約束をすること)、③トライ&エラーの発想を持つこと(不祥事が起こらないようにすることも大切だが、不祥事が起きたら損失を最小限にする努力をすること、つまり噓をつかないこと、このまま放置するとたいへんなことになると指摘すること)、④弁護士のスキルで求められるのは、法律の知識のみならず理屈・数理・倫理であることという点でした。

 上記の「株主との対話」という側面は、私にとっては新鮮な視点でした。上場会社にとっては機関投資家の論理と無関係でいることはできませんが、顧問弁護士という立場で関わると、概して抜け落ちてしまう視点です。取締役会で議決権を持たない社外監査役であれば意見を述べる範囲にとどまる事柄も、社外取締役となると、市場の論理を踏まえて、上記のトライ&エラーの発想を持って、経営陣の1人として経営判断をしていかなければなりません。取締役の善管注意義務の重さを感じます。

 弁護士が社外役員として機能するには、大きな問題に発展し得る事象であるか否かを判断・認識できる鋭敏な感覚とバランス感覚、そして第三者を説得できる論理の全てを持ち合わせることが必要だと思いました。日々の鍛錬の大切さを改めて痛感した次第です。
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