東京21法律事務所所属

弁護士 広津 佳子  Lawyer Keiko Hirotsu Official Site

ブログ
2014/11/9
医療通訳の今後
縁があって、2014年11月9日には、東京外国語大学で開催された「IMIA(国際医療通訳士協会)アジアシンポジウム~国際医療推進とオリンピック開催に向けて 医療通訳推進のため、日本とアジアの実践者集合~」に参加しました。
 
 安倍政権も、成長戦略の1つとして、メディカルツーリズムを挙げていますが、医療の現場は課題が多いようです。例えば、医療通訳の養成や確保、通訳の認定制度の整備、医師側の意識の改革(日本語のあいまいな表現を避け、主語と述語を明確にする、言語ができないことで気後れする医師が多く、患者は不安に思ってしまう・・・)、医師や看護師等の医学外国語教育、通訳費用の負担は誰がするのか、医療費徴収の明確性(日本では、検査や診療後に医療費を支払う仕組みなので、外国人が不安に思う)等が指摘されています。

IMIA日本支部は、2015年に通訳者認定試験(筆記と口頭試験)として、パイロットテストを実施する(2015年は日本と英語、2016年を目処に北京語、ポルトガル語、スペイン語を追加)予定です。ただ、認定試験合格に有効期間を設定するのか(更新制度の有無)は不明でした。また、シンポジウムでは、IMIA日本支部の従事者は、仕事をしながらボランティアでIMIAの業務をやっているとの話もあり、試験問題の作成自体は業者に任せるとしても、各言語について試験官も必要ですし、試験制度の維持は容易ではないと思いました。
そして、富裕層を相手にするメディカルツーリズムであれば、患者が通訳費用を負担するのですが、日本にいる外国人患者の全てが通訳費用を負担できるわけではありません。現在、医療通訳派遣を実施している京都や神奈川、東海3県(愛知、岐阜、三重)などでは、通訳費用は1時間1000円(交通費込)で1回3000円とされているとのことで(県、医師会や病院、患者で一部ずつ負担していると聞いたことがあります)、これでは、せっかく高度な医学的知識を得て通訳スキルを磨いても、生活が出来る水準ではありません。医療通訳を生業とするための工夫も必要と思われました。

大学の試みとしては、大阪大学医学付属病院(阪大病院)が2013年4月に国際医療センターを立ち上げました。大阪大学教授もスピーカーの1人として、日本で外国人患者を診察し、外国人医療従事者と一緒に働くというインバウンドと、日本の優れた医薬品、医療機器、医療サービスの海外展開のアウトバウンドを進めていること(企業も参画)、さらに、大阪大学は大阪外国語大学と統合したため、外国語学部の学生が大学内にいるという強みを活かして、医療通訳の養成も試みているとのお話もありました。

 ちょっとお話を聞いただけでも課題が多いのですが、昼食時にテーブルが一緒だった聴取者からおもしろい話を聞きました。テレビ番組の制作関係者の方ですが、かかる番組制作の技術を活かし、遠隔医療として、医師同士、あるいは医師や患者との間で心電図やエコー動画、顕微鏡映像等もカラーで共有しながら会話ができるという技術を開発し、日本小児循環器学会でもその威力が賞賛されているそうです。ただ、都心から地方への情報発信は可能でも、地方から都心に情報を発信するインフラがまだ整っていないため、現時点では、利用に制限があるとのことでした。

 これからは、単なる調味料ではなく「カップラーメンがよりおいしくなる」調味料として販売するといった市場の細分化のみならず、同時に、異業種における知恵と経験も活用して、統合的な視野も持って、ビジネスを展開することが重要ではないかと思いました。テーマが非常に広範囲で、いろいろ考えさせられたシンポジウムでした。 
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